もともとVR(バーチャル・リアリティ)が好きで、2020年ついにOculus Questを購入。デジタルエクスペリエンスの概念を永久に変える出来事になりました。 幅広いゲームエクスペリエンスを除けば、自分の場合、仕事でもVRを使うことで、ふだんの作業フローにも変化がありました。例えば、ドローンでの空撮の依頼に対して、最近では事前のプランニングの段階でGoogle Earth VRを使用しています。これであらかじめ飛行ルートのプランを立て、地形とアングル、障害物を把握し、十分な下準備をしたうえでドローンを飛ばすようにしています(許可取得も当然必要です)。さらに最近はバーチャル会議、3Dモデリングのデモといった分野にも手を広げ中です。
VR技術はブームの立ち上がりが遅くて、「ギミックすぎる」とか「まだ一般のマス市場向きじゃない」という人も結構います。本当につい最近までそういう空気でした。でもFacebookが買収したOculusからスタンドアローン型のゲーム向けVRヘッドセットが発売になったのをきっかけにここ何年かは潮目が変わってきているのを感じます。特にQuest 2は性能と価格のバランスが絶妙で売れ行きも好調。並居る競合を抑えて圧倒的市場シェアを確立し、2020年第4四半期だけで100万台以上を売り上げました。*
もちろんだれもが順風満帆だったわけではありません。業界の明るい見通しとは裏腹な展開に、数々のイノベーションで黎明期のVRを盛り上げてきた大手プレイヤーのHTCは製品リリースを重ねるたびに体力を削がれていき、Facebook傘下Oculusが市場を席巻するのと入れ替わるように、家庭用ゲーム市場からの撤退を決めました。
そんなHTCにもやっとカムバックの兆しが見えてきました。ただしこれまでとは違って、法人用VRにあらゆるリソースとフォーカスを集中させていく路線のようです。先日、(VRで)開催されたHTC ViveCon 2021に参加してきました。バーチャル空間の会場を練り歩きながら、多数の参加企業の担当者と直接話をすることができました。VRにちょっと興味のある方から、事業自体がVRをメインとしていたり、既に導入しているヘビーユーザーまで様々な方が参加。 キーノートセッションではHTC独自のエコシステムと一緒に2つの新型ヘッドセットも公開になったんですが、そちらも明らかに法人市場向けでした。周辺機器と一緒にデモされたのが出張アプリのマーケットプレイスですし、ほかにもHTC独自開発のXR Suite of VRアプリやデベロッパー提携プログラムも紹介されました。
法人用VRはゲーム用VRに比べると盛り上がりに欠けますが、地道に成長中です(2020年の時点で約145億ドルの市場が2027年までに約923億ドル市場になると予測**)。特に成長が顕著なのが研修や社員教育の分野ですが、デザイン、ビジュアルコラボレーション、ヘルスケアといった分野でも広がりを見せています。解像度、リフレッシュレート、視野角(VOC)の進化もめざましく、目利きのプロの使用にも耐えるレベルになっています。既存の枠にとらわれない発想の持ち主から斬新なアイディアが次々と花開くなか、時代の変化に乗り遅れないよう、VRもやっといろんな産業に羽ばたく足場が固まってきた感がありますね。
今はまだお金も人もゲーム産業に集まっていて、もっと高度なVRエクスペリエンスは二の次という空気が支配的ではありますが、Wildcard Crewも法人分野のVR開発の一翼を担っていけたらと考えています。これからが楽しみです。
Creative director at Wildcard Crew.
Born in Melbourne, Australia, but Tokyo based since 2007.
Enjoys art, new technology and flying spaceships.